★「バグダード一ぴかぴかの靴をはく私」

「イラク平和チーム」のメンバー、シェーン・クレーボーンの「暗い日々とぴかぴかの靴」と題する文章が、メール転送されてきている。

私は、ムッセフという10歳ぐらいのホームレスの少年と、とくに親しくなっている。彼はたくさんいる靴磨き少年のひとりである。最初に会った日、私は、食べ物を買う金をくれとしきりにせがまれた。しつこく財布を狙うので、私もがんとして「ノー」と言いつづけると、彼はふいとそっぽを向いて「こんちくしょう」と言った。突然走り出し、私はびっくりしてあわてて振り返ったものである。すばらしい第一印象と言うにはほど遠かった。しかし、日に日に私たちの関係は近しくなっていった。一緒に散歩をし、宙返りをして遊び、飛行機に向かって「サラーム」(平和) と叫んだりした。いまでは私が外出すると、彼は猛スピードで走ってきて、私の腕のなかに飛び込んで、頬にキスをする。そして私の靴はバグダード一ぴかぴかになっているのである。

ある日、私たちのグループが、戦争と経済制裁で苦しんでいるイラクの子どもたちと家族の人たちの写真を掲げて、街の中心部まで歩いていくのに、ムッセフも加わった。バグダード一賑わう交差点に私たちが立つと、メディアが写真を盛んに撮った。この事態について、ムッセフは自分なりに考えはじめた。明るかった顔が暗くなった。私がなにをしても彼は笑わなかった。一行が帰途に就き、カメラもいなくなったが、私たちふたりは座ったままであった。彼は、片方の手で爆弾が落ちる仕草をし、爆発の音を真似ながら、目に涙をいっぱいにためていた。

突然、彼は振り向くと、私の首にしがみついた。すすり泣き、身体を振るわせて、苦しげに息をしていた。私は声を上げて泣き出した。カメラがみんないなくなっていてよかったと思った。泣いている私たちは、友であり兄弟であり、もはや平和活動家と被害者ではなくなっていた。その後、私は彼をレストランに連れていった。私は店の人たち全員にチップを渡して、私の客を歓迎してもらった。5 分毎に彼は、「あなたは大丈夫か」と尋ねた。私はうなずいて、「きみは大丈夫か」と訊いた。すると彼はうなずく。正直に言えば、私たちはふたりとも恐怖にかきむしられるようだったと思うが、どちらも、相手がまた泣きはじめることがないのを確かめたがっていたのである。

[2003.3.27]


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