★「洗い清めた国家」ダイエット・ネーション

 ネーション・ライトあるいはダイエット・ネーション。国家の軽装版である。そこには、犯罪、悪天候、過剰な税金がない。あるのは、太陽と瀟洒なヴィラと、それに輝かしいショッピング・モールである。洗い清められた国家への渇望を満たす計画が、いくつか進行している。

 ネーション・ライトの建設者として、おそらくもっとも熱心なのが、ペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦である。オマーンとサウジアラビアの間にある小国で、なかでも、首都のアブダビとドゥバイで、連邦国家収入の80%を生みだしている。なかでもドゥバイは、観光、貿易、不動産で群を抜く。観光客は年間500万人が、2015年には4000万に達する見込みである。連邦としても、石油と天然ガスの依存から脱けだしたい。

 ドゥバイ沖に、椰子の木をかたどった、ふたつの人口島「ザ・パーム」が建設されている。2006年から、ここのヴィラやアパートメントに9000人が住みつく。観光客も受け入れる。直径5キロで、その形が宇宙からもよく見える。

 この「ザ・パーム」を所有するナキール・コーポレーションは、さらに壮大な「ザ・ワールド・アイランド」プロジェクトを進めている。やはりドゥバイ沖5キロに、五大陸を縮小した形で、200の小島を散在させる。島のサイズはさまざまで、実在する国家に照応するように配置される。2008年の完成予定。

 これらのプロジェクトでは、自由金融制度が実施される予定で、銀行、証券、保険業務が自由に行われる。紛争解決のための裁判所も独自に設けられる。


フリーダム・シップ

 なお、すでに稼働しているダイエット・ネーションとして、客船をそっくりコンドミニアムにして提供する「ザ・ワールド」がある。乗船者にとっては、船が自宅であり、自宅とともに、世界を旅して歩く。すでに275家族が、この「フリーダム・シップ」で暮らし、地球を巡っている。空港もあり、10万人までは居住可能という。

 国家の負の要素を捨てて、快適な生活のみを残したダイエット・ネーション。テロと自然災害の恐怖が盛んに喧伝される一方で、囲い込まれた自由を求める衝動が肥大していく。ゲイト・シティなどの地上の試みにもはや我慢できなくなり、海へ出て、疑似国家を建設する動きが、急速に活発化しつつある。

 国民に対して、国家が安全を提供しなくなるとき、どのような事態になっていくかを、これらの試みが示唆している。在来の国家は見捨てられる。これらのダイエット・ネーションの「国民」にはアメリカ人とアラブ系とが多い。アメリカとアラブ国家には富が集中するだけでなく、危険もまた集まっていることを示しているにちがいない。
(2005.10.11)


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