★浜松町駅は、いつの間にか東京変貌の真っ只中に
  

 街が変わると、駅も変わる。人と駅との付き合い方がちがってくる。そうなると、駅の内外のつくりがそのままというわけにはいかなくなる。当然これも変わらないわけにはいかない。

 街と駅、あるいは人と駅、それぞれの関係はおもしろい。そのことを実感するのが、昨今の JR 浜松町駅である。

 羽田空港へ行くときやそこからの帰りに、モノレールとの乗り換えをするための「通過駅」。これが、ずいぶん長いこと、浜松町駅の、いちばんの仕事であった。この乗り継ぎ客が、乗降客全体の 3 分の 1 を占めるという。ぼくもそのなかのひとりである。

 ところが近年、浜松町でときどき下車するようになった。改札口を出て、どっかへ行く。ということはつまり、周りの街に用事があったり、遊ぶ場があったりするからである。

 駅の海側では、しばらく前から湾岸開発が進行している。その結果、大型のオフィスビルや、有名ホテルが立ち上がった。イベントスペースもつくられた。11 月半ばには、駅から歩いて 7 分の汐留川沿いに JR 東日本アートセンターの「自由劇場」もオープンするという。こうなると、多様な人々が出入りする街としての「資格」がほぼ揃うことになる。

 さらに、駅のあたりは、大規模再開発地の汐留シオサイトにもつながっているし、都営地下鉄や新交通の駅が周囲を固めている。いつの間にか、浜松町は、東京の変貌の真っ只中に位置するようになった。

 したがって、都内を移動していると当然、ここで下車する回数が増える道理である。ぼくの場合、今年に入ってからだけでも、おぼえているかぎりで、すでに三回は乗り降りしている。以前は数年に一回だったのに。

 一度は、この春、企業主催のセミナーに出かけたときだが、昼食のためにそば屋に入ったら超満員で、しかもほとんどがビジネス・スーツなのにびっくりした経験がある。

 また、長いこと地方にひっこんでいる恩師が久しぶりに上京するというので、東京湾を望むホテルに訪ねていったこともある。74 歳の先生を案内して、山手線に乗り、上野御徒町の馴染みの寿司屋に出かけたのである。

 もう一回は、近くの公共施設へ書道展を見に行った。知己が入賞を果たしたのを口実に、近くの高層ビルの中華料理店で宴会となった。

 そんな変化に対応してなのであろう、このごろ、駅が化粧直しをしている。羽田行きのモノレールに、JR のコンコースから直接行ける通路ができたのも、そのひとつである。おかげで、それまでの、階段を下りたり上がったりの不便が解消された。駅のホームとコンコースの間にもエスカレータやエレベータが設置された。

 こうして変わり行く駅のなかで、変わらない風景がひとつある。いや、変わってほしくない風景と言ったほうがいいかもしれない。

 品川方面行きの電車の最前部近くのホームで、元気におしっこをしつづける小便小僧である。そこに記された由来によれば、この像は、昭和 27 年に、鉄道開業 80 周年を記念して、歯科医の某氏が寄贈したものという。半世紀前から、この場所にいるわけである。

 小便小僧はもちろん他にもあるけれど、ここの「小僧」がユニークなのは、裸ではなくて、衣装をつけていることである。先日通りかかったときは、祭り袢纏姿で、帯の背中に、赤い文字が躍る「祭」のうちわまで挿していた。

 大礼服などという大げさなかっこうのときもあるそうだけれど、それにはまだ出合っていない。

 ユーモアと、少々のいたずら心。この像を眺めると、和やかな気分になる。電車から下りたときにふと思い出し、わざわざホームの端まで行ってみることもある。この小僧には、街と人と駅、それらの変化を見守っていてもらいたいものである。

[2003.12.8.]


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