カット

★夢の東京湾横断フェリー


錦糸町から、総武線の津田沼行きに乗る。
金曜日の午前8時29分である。
反対方向の東京方面行きは、当然満員になっている。
しかし、こちらもガラガラというわけにはいかない。
サラリーマン風や、学生生徒風の乗客がかなりいる。
千葉行きに乗り換え、さらに君津行き快速にもう一度乗り換える。
それでも、車内の「ちょっと混み」状態は変わらない。
車内ががら空きになったのは、木更津に着いたときである。
これには驚く。
どこにでも会社や学校はあるものだと、妙なことを考える。
木更津を過ぎると、車内が閑散としたばかりではない。
外の景色が山がちになって、トンネルまで登場する。
旅の気分になってもいいんだよ、と言われているみたいではないか。
君津でまたも乗り換えである。
乗り換えが多い。
急ぐ旅ではないのである。
そこで、来た電車や列車にどんどん乗ってしまう。
結果、乗り換え三昧の旅になる。
出たとこ勝負の、いい加減な旅人は、そんなことは苦にならない。
しかし、ひとり悦にいってばかりいる場合ではなかった、じつは。
君津で闇雲に乗ったのが「ビューさざなみ」という特急列車であった。
後で特急料金620円を請求された。
やがて、浜金谷の駅が近づいて、青々とした東京湾が眼前に広がった。
ああ、来てよかったなと思った。
この小さな駅で下り、脇道をたどって、金谷の港を目指した。
フェリー乗り場が見えてきたと思ったら、いましも白いフェリーが出港していく。
おーい、待ってくれよ、と叫ぶわけにもいかない。
立ち止まって、船を見送るだけである。
次の船が出るまでには1時間近く間があるらしい。
うんざりするけれど仕方がない。
千葉側の金谷から、神奈川側の久里浜までの定期フェリーに乗ろうとしている。
それはぼくの長い間の夢であった。
きょうは、なんとか叶いそうである。
岸壁に立つと、フェリーが向こうに着いて、また戻ってくるのが見える。
サラサラと、静かな波音が聞こえる。
ポケットには、当日限り乗り降り自由の「東京湾フリーきっぷ」が1枚。

ppp <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<