★連載第 12 回
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12. デパートの食品フロア他

 住宅団地の外壁塗りの粗っぽさを見上げていると、行ったことのない、もはや行くこともできない「ソ連」が身近に感じられる。ここは「東ドイツ」である。  

 今回は、ベルリンの北辺に宿をとったので、毎朝、バスを利用することになった。通勤時間にベルリナーと乗り合わせる。バスは定時にきちんきちんとやってくる。人々は、バスが来るはずの時刻が近づくと、どっと集まりだす。車内ではかならず年寄りに席を譲る。譲られたほうは、礼を言うこともなく、会釈をすることさえなく、平然と座る。これがとても気持ちがいい。  

 スーパーの袋がない。  

 カーデーヴェー・デパートの食品フロアを、2時間ほどかけて巡る。

 コーヒー、ジャム、紅茶など、自社ブランド商品の多いこと。それらをそれぞれ同じフロアの数カ所に配置してある。歩いているうちにひどく気になる。つい手を出してみたくなる。

 コーヒー売り場と紅茶売り場が隣りあっている。狭い通路が、これらふたつの売り場を分けている。コーヒー売り場側から、紅茶のほうへ移動しようとすると、コーヒーの最後に、「痩せるお茶」が並んでいる。残像の効果を期待しているのであろうか。  

 ザヴィニー・プラッツ駅のガード下にギャラリー。隣りがカフェ。ふたつは奥でつながっている。ギャラリーは閉店間際。隣りでビールを飲み、オフィスからの帰りがけらしい客たちを眺めていると、このままベルリンに居られたらどんなにいいか、と思う。  

 串焼きの店に入る。チーズ巻きはさすがにうまい。日本人のウェイトレスがドイツ語で話しかけてくる。慣わしになっていれば、相手がドイツ語を話せるかどうかなど、まるで気にならないのであろう。やがて、大きなトランクをひきずった日本人の男が入ってくる。床の上でトランクを開ける。東京から着いたばかりという。この店の主人である。神戸にも青山にも店があるから、いつか行ってくださいと、パンフレットを渡される。神戸で開かれる、なにかよくわからないコンサートのパンフも併せて。  

 Uバーン、Sバーン、バス、トラム、それにDB。これらがどう連関しあっているのか。ベルリンの公共交通システムの全容を理解したいものである。これらが重なり合いながら、スムーズに運行しているらししいことが、不思議に思える。

 運転は荒っぽい。日本は親切志向のようだけれど、ベルリンのように交通機関のほうに人間が合わせていくのは、そうせざるをえないでそうしているのか、あるいはそれでいい、むしろそれがいいと考えているのか。

 東西両ドイツの交通システムがどうちがっていて、統一後、どう合体させたのかを知りたいと思う。

 都市行政に於ける交通行政の位置。ドイツ国家とベルリン、それぞれ、交通については、どういう関わり合っているのか。

 車内の寄付集め、物乞い、一部音楽活動、それらに遭遇するたびに、街のなかを移動していることを実感させてくれる。日本の地下鉄やJR電車が、ほとんど密室化しているのが見えてくる。

 料金について、チケットを乗客が自分で完全に管理しなければならず、それができていなければ、故意であろうと、不注意であろうと、一律に罰金を課せられるに等しい金額を徴収される。改札がない代わり、チケットを持たずにいる乗客は、抜き打ち検査で挙げられる。この制度の思想はどんなところから来ているか。

 今回はじめて、『地下のベルリン』(河合純枝著、文芸春秋刊)を実際に役立てることができた。著者自身がベルリンの地下を経めぐった記録は、圧倒的である。本書に導かれて、いくつかの地下施設を見ることができた。


防空壕に想定された地下鉄の駅構内

 今年になって、「ヒトラー〜最期の12日間〜」という映画を観た。これも地下のシーンが多く、しかもそれぞれに納得のできる地下、と言うのも変だけれど、少なくとも、地下であることに映像としての違和感を抱かなかった。 

 東西ベルリンを隔てる壁の下を掘り抜いて、東ベルリンからの逃亡者を送り出す作業を描いた映画「トンネル」を観たことがある。ベルリナーは、地下空間に、その精神のかなりの部分をしのびこませているのであろうか。

to be continued.....


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