
★千葉港、薄いピンクの風呂敷が行く

「運がよければ、富士山まで見えるんですけどね」
エレベーター係の女性は気の毒そうな表情をした。
あいにくの雨。
晴れた日の夕暮れには、黒々とした富士が夕焼けのなかに突き出すという。
地上113メートルという展望室。
赤いウィンドサーフィンの帆が水中に倒れるのが、眼下に見える。
その傍らを、青い帆がゆっくり通過する。
倒れたままの赤い帆。
どうしたのか。
身を乗り出しかける。
ハーフミラーになったガラスに額をぶつけそうになる。
千葉港突端の「千葉ポートタワー」にははじめて来た。
ここまで来るつもりはなかった。
JR千葉駅から、モノレールに乗るだけでよかった。
モノレールの中の宙づり感覚と、ふわふわとした浮遊感。
車体がカーヴするときの思い切りのよさ。
気に入っている。
終点・千葉みなと駅で降り、臨海公園プロムナードを歩くうち、「タワー」に。
来るつもりはないところに来てしまった。
途中、美術館と結婚式場のチャペルが向かい合っているのを見た。
しっかり目のなかに焼きつけて、もう忘れない。
同じ道を戻りかける。
前方に男がひとり。
薄ピンクの風呂敷包みを提げて、よろよろと歩いていく。
風呂敷は引き出物か。
雨がやみそうでやまない。
★2007.10.26.

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