★書評/『京都みちしるべ』町屋さと子

 仕事で、他の地方へ出かけたとき、時間を持てあますことがある。

 先日、京都へ行く機会があった。用事を済ませたあと、なんとなく本屋へ立ち寄った。たぶん、わたしの住む首都圏では見かけないであろう地元色あふれる本がたくさん、店頭に並んでいる。今日はそのなかで特に目にとまった1冊を紹介したい。こういう本が京都では、売れるんだろうか。本屋の規模のわりに冊数の多く置かれている本があった。平積みの一番上から1冊取って、ながめた。『京都みちしるべ』。表紙の向きからして小説かと思ったが、ガイドブックのようだ。

 ページを繰り、「京都のことばで書いてあるんだな」と思いつつも、わたしの思ういわゆる「京都弁」と違うなあとも思う。舞妓さんが話すような言葉を京都弁だと思ってしまうわたしは、本のなかの言葉に少しとまどった。

───

たかあき もちろんコース仕立てで、そのなかの1品がお好み焼いうもんですわ。とりあえず、いちばん安いコースを3人前たのみましょか?
せいじ あかん、あかん。そんな予算どこにあんの。普通のやつで3人前頼むで。おばちゃ〜ん、ミックス2つとミックスモダン1つください。
ひろ ケチ……いや、普通の値段のお好みもあってよかったですね。ところでスタートからここまで、まだ50mぐらいしか進んでないんですが……。
二人 俺らもそう感じてたんや。はよ食べて先に進もう!

───

 セリフで本文は進んでいく。シナリオふうだ。ことばの主(ぬし)は京都で歴史ある旅館を営んでいたり、ホテルに勤めていたりする若い人たち。彼らがおしゃべりしながら、京都を歩くルポルタージュスタイルだ。門外漢のわたしは駅前のホテルならまだしも「京都の老舗旅館」といわれても、あまりピンとこない。でもそう書いてあるんだから、きっとそうなんだろう。巻頭に、彼らの勤務先とポートレート、自己紹介が掲載されている。スタッフがこんなに全面に押し出されているガイドブックも珍しい。「京都にとてもくわしい人たちが作った本」というのが売りなんだろう。

 じつに、淡々と進む紙面。半日〜1日くらいで徒歩で行けるコースが12の章立てで紹介されている。

  1. ここは穴場だ!
  2. お花見とお参り
  3. 京都のおへそ
  4. 京都人の好きなもの
  5. 一度に味わう、京のいまむかし
  6. 京都のおへそ
  7. ちゃりんこコース
  8. 緑豊かな、神様が来はる場所
  9. うまいもんとぼちぼちの山道
 10. 古寺と映画と、活気ある庶民の街
 11. 名水が支える、酒の街
 12. 義経はんに会いに行こ

 進行はスタッフ13名の主観に委ねられている。観光客が行きそうなところ、好きそうなものををピンポイントで紹介するのではなく、各々が好きなところやよく知っているところを取材しているのだろう。

 「市場いうても錦は特別。やっぱええもんにこだわって食べはる人は多いね」

 「路面電車が走っとったころはこの辺も細い細い道やったのに。いまは見違えるようになったな」

 「ここ、僕が学生時代に通ってた店や。おいしかったしここにしようや」

 こういうことばと一緒に、地名や社寺仏閣のいわれ、地元名物人とのやりとりなどがちりばめられている。

 とくにこれといって情報量が多いとか、装丁が美しいといったような特徴はない。ただただ、京都を歩き、喋る。それだけに徹している本。1000円と安いし、旅の思い出におすすめしたい1冊だ。
[2005.11.11.]

書籍データ
『京都みちしるべ─もてなしのプロが案内する、ほんまもんの京都』
編者=京都みちしるべの会
教材研究所刊
952円+税
2005年10月30日初版

京阪では書店で販売中。その他の地方での購入は、次のサイトから http://www.kit-net.ne.jp/mitisirube/index.htm

(2005.11.11


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