☆バーのある人生

表紙写真
著者/枝川 公一 Koichi Edagawa
タイトル/バーのある人生
発行/中央公論新社・中公新書
初版/2006.2.25.
定価/720円+税
判型 ページ数/新書判 196ページ
ISBN4-12-101835-4


  バーの重い扉の向こうには、非日常の空間が待っている。そこは、酒だけを売っている場所ではない。客のひとりひとりが、バーテンダーと対面し、一期一会の時間を贖い、空間に戯れる街の「秘境」である。そこには、シキタリもあれば、オキテもある。しかしそれらは、居心地をよくするものでこそあれ、がんじがらめの規則ではない。これから出かける人の背中をそっと押し、行き慣れた人をさらなる一軒へ向かわせる、体験的バー案内。……(本書の帯より)

《目  次》

1 バーへの心の準備
 バーとは?/人はなぜバーへ行くのか/日本のバーの歴史/ホテルと街場/バーの名前/空間としてのバー/照明と音

2 バーに入る
 初めてのバーへ/バーテンダーとは?/人はいかにしてバーテンダーになるか?/バーテンダーとカクテルブック

3 カクテルを楽しむ
 「雄鶏の尻尾」の醍醐味/香り立つ/カクテルABC(カイピリーニャ、ダイキリ、ギムレット、ジンリッキー、ジントニック、アイリッシュ・コーヒー、マンハッタン、マーティニ、ミント・ジュレップ、ソルティ・ドッグ、サイドカー、雪国)

4 バーの時間の過ごし方
 入る前から注文が決まっている/メニューがない/同行ふたり、同じ注文をする/ちょっとちがうお酒を/いつものお酒とちがうものを/どんなお酒が苦手かを言う/「なんでもいいよ」と言う/「つくるのが好きな」カクテルを尋ねる。……


 《抜  粋》

「あとがき」より

 バーと付き合うようになってから、十数年が経つ。それは、中年から老年に入る時期にあたっている。もっとも、それ以前にバーと没交渉だったというわけではない。そのドアを開けて入ったことが何度かはある。ただし、おそるおそるであって、バーという空間に落ち着きをおぼえ、バーテンダーを正視できるといった状態ではなかった。自分にとっては無縁の場所、近づきがたいスペースと思い込んでいた。
 その違和感のある世界とつながりができたのは、食の雑誌 dancyu(月刊・プレジデント社)で、東京のバーを毎号一軒ずつ取り上げて、その店についてエッセーを書く仕事をはじめたのがきっかけであった。この連載記事では、はじめはこわごわふるえながら、やがて居直って知ったかぶりをしつつ、さまざまのバーを取り上げてきた。
 バー・エッセーは、思いがけず長くつづいた。途中2年ぐらいのブランクをはさんで、15年ぐらいにはなるであろう。エッセーを書くのは、毎月一軒についてだけだけれど、そこに決めるまでに、いくつかのバーへ行ってみる。それを月ごとに繰り返すわけだから、どんどん数が増える。数えたわけではないので正確なところはわからないけれど、すべてを合わせると400軒近いバー、それもほとんどが東京近辺のバーを巡ったことになるであろう。
 こうなると、否応なしに、バーは自分の生活の一部になっていく。もちろん、当初の違和感がそのままずっとつづいていて、どうしてもバーに馴染めないということであれば、如何にたくさんバーに通おうと、自分との間には、すきま風が吹きっばなしの状態だったろうし、連載もこれだけ長くはつづけられなかったにちがいない。ところが、幸か不幸は、バーを好きになってしまった。
 バーってなかなかいいじゃないか、そこにいると楽しいよ、バーテンダーっておもしろい人たちだ、それにもちろん、バーにいるとお酒の楽しみ方がどんどん広がっていく。そういう次第で、こちらの一方的な思い込みかもしれないけれど、バーに対して親近する気持ちを抱くようになった。自分の人生のなかでも、バーとともかく近づきになれたのは、幸せなことのひとつだったと思う。
 一方、バーについて知るようになると、バーや、その場所を仕切るバーテンダーに対する誤解も目につくようになった。偏見と言えるぐらいに、社会的な広がりを持つ誤解もかなりある。バーテンダーのことをバーテンと呼ぶのなど、いまでは少なくなったとはいえ、まったく耳にしないわけではない。女性ひとりでは、バーに入れないと信じている人もかなりいる。あるいは、カクテルは「女の飲むものだ」と信じて疑わない男の前で、バーテンダーが沈黙する光景にも出合ったことがある。
 あるいは、かつて自分自身がそうであったように(いまも完全に払拭されたわけではないのだが)、バーとどう付き合うかについて、戸惑いや懸念を抱く人も少なくない。カウンターに座って、どう注文したらいいかわからないというぼう然自失もあるし、目の前にいるバーテンダーと目が合うのが怖いという、神経症まがいのとまどいさえある。それらはぎごちない態度や鬱陶しい感情となって表われてしまい、せっかくバーへ出かけても、十分に楽しむことができない。
 バーと自分の付き合いを振り返ってみると、バーとの距離が縮まって、フレンドリーな気分になれ、楽しさが増すという経験が何度かある。この本では、そのあれこれを書き綴った。
 最近は、東京にかぎらず各都市に、バーテンダーが力を発揮する、本格的なバーが増えてきている。お酒をおいしく飲むとともに、バーでの時間を、人生の楽しみのひとつとして満喫する人たちがたくさんいる。
 これからバーというものに近づきたいと思っている人が、心に障壁をつくらずに、この楽しさに向き合うための一助に、この本がなれたらいい。あるいは、すでにバーに馴染んでいる人には、さらに楽しみが深まり、バーへの親しみが増すきっかけになるかもしれないという思いもある。……

この本は、〈枝川公一の本〉Order Pageから注文できる。の〈購入したい〉ボタンをクリックし、Order Formに必要事項を記入した後、送信してください。


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[2006.2.27.]