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★2001年の読書
月刊『みすず』編集部からの「2001年中に読んだ書物のうち、とくに興味を感じたものを5点以内で挙げるように」というアンケートに対して、つぎのように答えた。
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*レム・コールハース著・鈴木圭介訳
『錯乱のニューヨーク』
ちくま学芸文庫
旧世界貿易センタービルをネタに世界を強請っているブッシュに、是非読んでほしいけれど、あの大統領には、これを理解する能力はないであろう。欲望を媒介として都市文明の到達地点を指し示すプロセスにはわくわくさせられる。
*大西みつぐ写真集 『遠い夏』
ワイズ出版
「取るに足らない日常」が、写真家によって切り取られることで、異常な熱気を帯びて、「読者」を打ち、叩きのめし、ばらばらにする凶器と化する。そんな快感を心ゆくまで堪能させてくれる。80年代の陽射しは、まことに怖い。
*吉本隆明全著作集1『定本詩集』
勁草書房
私事だが、2000年の2月に母が死んで、その家から、自分が20代に読んだ本が大量に出てきた。ほとんどを処分し、数十冊のみを残した。そのなかの一冊である。「崩れかかつた世界のあつちこちの窓わくから/薄あをい空を視ている/‥‥」(一九五二年五月の悲歌)。やっといまになって読み進むことのできる詩たちである。
*片岡義男編・訳 『ロックの時代』
晶文社
これも古い本で、71年に初版が出ている。60年代ロックの評論集だが、ミュージシャンとのインタビューがたくさんあっておもしろい。それぞれにいいことを言っている。「私はステージで音楽をやるのが好きです。私は永久に音楽をやるつもりでいます。だから、いまがどうというようなことは、あまり私にとっては重要ではないのです」(ボブ・ディラン)といった、なんでもなさそうな発言に、じつは音楽とはなにかというテーマへの真の入口が隠れているのを教えられる。
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他の方々はどんな本を選んでいらっしゃるのかと思い、送られてきた掲載誌(2002.1)をあっちこっち拾い読みした。
イギリス文学の川口喬一氏が、5冊列挙したうちの3冊までが、完全収録のカセットテープ版であるのが目についた。主に通勤の電車内で、それでも足りないと自宅で「椅子に寝そべって」聞いたものだという。
いずれも長編大作ばかりである。なかに、Margaret AtwoodのThe Blind Assassin(Doubleday,2000)が含まれている。これは、半世紀以上にわたるカナダのある家族の物語だが、川口氏は、次ぎのように記している。
「‥‥ときどきお得意の韜晦趣味が顔を覗かせ、何が起こっているのか、煙に巻かれることがあるが、テープは容赦なく進む。こちらも流れに乗ったつもりでいるから、いちいち巻き戻しはしない。それにしても、後半の物語性はなかなかのものである。このように、最近は新作の無削除版テープも少しずつ増えてきた。老境の怠け者にはもってこいの作品受容姿勢である」
「本」との付き合い方をひとつ教えられた気がした。★
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