その名も麗しき空蝉橋は、南北大塚を繋ぐ唯一の橋だ。南側はほぼ水平に東池袋方面へ続いて春日通りにぶつかり、北側は坂を下って旧ガン研通りにぶつかるという、両端が行き止まりな空蝉通りの中心地。そして駅周辺で最も眺めの良い一般道でもある。
その真下には大東京の心臓部、JR山手線がひっきりなしに行き交う。一方かつては極限られた本数の貨物だけが通った線路には、成田エクスプレスや高崎線などのJR車両ばかりか、東武鉄道けごんまでが通り、そのうち新幹線も通過するのではないかと、もっぱらの評判だ。
大塚駅ホーム脇の貨物駅跡に作られたホテル『ベルクラシック』では、雨にも風にも負けずに、チャペルの鐘の音が響き渡り、視線をやや右に向ければ、サッカーボール状に塗り分けられた給水塔が、ワールドカップ人気の何十年も前から、南大塚を見守っている。真正面にはスカイツリーが日々成長を続け、まるで山手線の線路を遮るかの如く立ちはだかっている。
振り返って池袋方面を眺めれば、スカイツリー何する物ぞと、豊島区ゴミ焼却場の巨大煙突が、その角張ったフォルムを天空に突き立てる。密集する上池袋、池袋本町の住宅地で迷子になったら、こいつほど頼りになる物はない。しかし昔を知る者には、あの懐かしい池袋ジャンボプールの勇姿が、脳裏をかすめるのだ。その手前の線路上には幾つもの小さな橋があり、ドラマや映画のロケにも使われる人気者。
線路を横切る空蝉通りを見れば、橋の南詰交差点には「空蝉橋南」、北詰には「空蝉橋北」と、目と鼻の先の信号にちゃんと名前が付いている。南口方向の沿道は、いつしかマンションで埋め尽くされ、良き眺めとは言い難い。他方北口方面は桜並木で、沿道に建物のない独立した坂道なので、威圧感が少ない。しかし坂道の傾斜角はきつく、いかに北大塚が谷底かを如実に表している。
更に橋の両サイド、線路に沿った道も、対面通行に一方通行、はたまた人がすれ違えないほどの細道まで、バラエティ豊かな4本が揃っている。スカイツリーはまだまだ成長を続け、北口側にも建設中のビルもあり、空蝉橋の眺望は、これからも変化していくに違いない。 |