★テロ対策キャリア説明会をぶち壊した「政治的嘔吐」

2005年4月13日 - 18日

4月12日の午後3時から、ハーヴァード大のキャリア・サービス課の主催で、CIA、国土安全保障省、および安全保障専門のシンクタンク2社の関係者が参加して、テロ対策をキャリアとして選択しようという学生のための説明会が行われた。会場にやってきた学生たちのカラーは、明らかにふたつに分かれていた。ひとつは、テロ対策を仕事として真剣に考慮している学生たち、もうひとつは、お行儀の悪い、ぶちこわし目的のグループである。なお、会場のサイエンス・センターの外では、30人ほどの学生たちが、プラカードを掲げて、イラクやグアンタナモでの米軍の残虐行為に対する、おとなしい抗議行動も行なわれていた。

 学内紙『ハーヴァード・クリムゾン』が伝えるところによると、説明会のぶちこわしグループが使った、基本的なテクニックは、次の通りである。

 1=絶え間なく咳をしつづけて、関係者の声が聞こえないようにする。2=「あなたのところでは、職員に拷問の訓練をしているというのは事実に反しているのか」などと、つぎつぎに質問を浴びせる。3=ひとりが、「自分はアメリカ市民ではない」と名乗ると、別のひとりが、「INS(移民局。現在は国土安全保障省の一部局)の者だ。国外追放にする」と叫びながら飛びかかる「寸劇」を演じる。4=会話ができないようにするために、ひっきりなしに手を叩く。5=生真面目な質問をする学生を罵倒する。6=わざと嘔吐をする。

 さらには、アブ・グレイブ刑務所を思い出させようと黒づくめで、会場に現われるパーフォマンスもあった。

 こうした行動について、学内紙『ハーヴァード・クリムゾン』の編集者のひとりが批評しているなかに、次のような部分がある。「いろいろな主張をしているようですが、気にかかったのは、『労働者のため』というくだりがあったことです。ところで、抗議行動の残がいをきれいにするのはだれだと思いますか。そうです、あなたがたが高邁な思想をうたいあげている、当のハーヴァードの労働者が、気持ちの悪い嘔吐物を処理するのですよ」

 この嘔吐者自身は、その後、編集部に「政治的嘔吐」に関する弁明のメールを送り、これが、同紙に掲載された。

 その説明によると、二重にしたプラスチック・バッグのなかに吐いて、その後はよく縛ってトイレのごみ箱に入れたから全く迷惑はかかっていないはずだという、という。また、この抗議行動を手伝った女性が、誤ってジェリー・ビーンを床にばらまいてしまったけれど(かつてロナルド・レーガンの大好物として知られたジェリー・ビーンを、なぜこのときに持っていたのかは不明)、これもひとつぶずつ、きれいに拾った。さらに弁明メールの主は、「もっと重要なこと」を指摘している。

 CIAも国土安全保障省も、ハーヴァード大学に係官を派遣して、彼らの考え方や意見を説明しようとしたのいうのなら話は別だが、そうではない。あきらかに、「優秀な頭脳」をリクルートしようとしてやってきた。つまり、若者たちを勧誘して、拷問、暗殺、集団移送などなどの人権侵害をさせようとしている。だから自分たちは、これについて警告するために、出席者全員にファクト・シートを配布し、これらの行為への嫌悪を表明することで、リクルートのプロセスに介入をはかったのである。その一環として、嘔吐のパーフォマンスがある。

 吐き気がするほどの嫌悪を表現するための手段として嘔吐を選択するのは、もっとも自然であるかもしれない。また、この学生は、お行儀よく、嘔吐物の処理にまで配慮したらしいが、こうしたマナーがきちんと守られている間は、イラクの戦場とアメリカ国内との間を隔てる壁はなお厚く高いとも言える。



2005年4月19日

『ヴィレッジ・ヴォイス』紙に、シドニー・H・シャンバーグが書いている「不服従の時」と題する主張が、興味深い。

 ブッシュ政権の秘密主義と情報統制は、ワシントンでこれまでに見られなかったレベルに達している。これに対して、メディアが抵抗しようとしていない。ホワイトハウスも、気に入らない記者は記者会見から出ていけばいいという態度である。先のブッシュの外国訪問に関するプレス・ブリーフィングが行われたときもそうだ。急にオフレコ扱いにすると通告されて、執拗に抵抗した記者はひとりだけで、けっきょく記者会見の席を立ったのも、この記者だけであった。

 このとき、一斉に記者たちが退席したならば、このようなやりかたが平気でおこなわれているようでは、信頼しうる情報を市民に渡すというジャーナリズムの義務が果たせないというメッセージが伝わったはずである。

 日本の首相が、国会審議の後に応じる「立ち話」も同様で、なにも答えない答えに、取り巻いた記者団から抗議の声が出ることは少ない。

 ジャーナリストとは、いけないと言われるところに入っていって、罰を受ける覚悟がいつもできている人たちのはずではないのか。

 ブッシュは、自らの政権の秘密主義、情報コントロールについて、その理由を「テロとの戦いを危うくしない」ための措置と言っている。しかし、情報密閉がしばしば、テロとは関係のないところで行われている。テロリズムとの戦いを持ち出せば、なんでも説明がつく。メディアや市民の行動を抑え込むための口実として、テロが最大限活用されているのである。

 メディアの必要性が広く人々の間に理解されていないことが、こうした事態を生みだし、持続させている。国家がウソをつき、それがきちんと報道されないことで、市民がいかに不利益を蒙るか。それを広く理解させる努力がさらに行われなければならない。

<<Catboat Journal=5>>

[2005.6.3.]


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