★転送/「“テロリスト容疑者”バッジをつけていて、搭乗拒否に」

 「私は、『テロリスト容疑者』というバッジをつけていたために、搭乗を拒否された」と題するメールが転送されてきた。送信者は、IT 起業家でシヴィル・リバタリアン(市民的自由意志主義者)であるジョン・ギルモア、受信者/転送者はアメリカの某オピニオン誌の編集者である。

 ギルモアは、サン・マイクロシステムズ社のワークステーションのデザインに関わった、同社のナンバー 5 の社員である。ビジネス・ソフト「ロータス 1-2-3」の開発者ミッチ・ケイパー、「グレートフル・デッド」の曲の作詞者として知られるジョン・ペリー・バーロウ、そして、アップル社の共同創業者であるスティーヴ・ウォズニアックとともに、「エレクトロニック・フロンティア財団」をつくり、オンライン上の自由確立に努めている。2001 年の 9.11 以後は、「無用な」空港安全管理措置に反対する活動を精力的に行い、現在、司法長官のジョン・アシュクロフトと二つの航空会社に対して、訴訟を提起中である。

 転送メールによると、ギルモアは、今度はブリティッシュ・エアウェイズとの間でいざこざを起こした。いままではアメリカ国内線だけだったので、これで国際線へ進出を果たしたことにもなる。彼の言い分に耳を傾けることにしよう。
 自由のための気高き戦士か、それとも、アホなトラブルメーカーか。さあ、どっちだ?

 恋人のアニーとぼくとは、きょう (3/19 金曜日)、ブリティッシュ・エアウェイズ(以下、BA)でロンドンへ飛ぼうとした。サンフランシスコ空港で、パスポートを見せ、くだらない手続きをすべてこなして、機内に座席を占め、機は滑走路を走り出した。突然、客室サービス主任のカリール・ミヤンが私の前に立ちはだかり、左の襟にピン刺ししてある小さなバッジを外してほしいと要求した。これは政治的な意思表明であり、あなたには、乗客の政治的主張を検閲する権利はまったくないと言って、私はこれをことわった。このバッジは、政治活動家エミコ・コヤマが創ったもので、「テロリスト容疑者」という文字が印してある。

 主任は、機長のピーター・ヒューズと一緒に、もう一度やってきた。ヒューズは、バッジをはずしてほしいと言い、やがて、はずすように求めてきた。もし言う通りにしなければ、航空機に危険を招くだろうし、連邦法を犯すことになると言った。私は、これは政治的な主張だと述べ、はずすのを断った。

 同機は、U ターンして、ゲートへ戻り、300 人の乗客全員が遅れた。

 我々は、ボーディング・ブリッジで、BA のサンフランシスコ空港マネジャー、キャロル・スペアに迎えられた。機長があなたを乗客として運ぶことを拒んだと語ったので、あなたを航空機から連れ出す以外に道はないと、彼女は述べた。私はまったく抵抗しなかった。なにも間違ったことをしていない中東系のの男が、「不快感を与えた」という理由だけで、機長が降機させた事件で、ユナイテッド航空が敗訴したケースを思い出してほしいと彼女に言った。しかし、私には機長の措置を支持する以外に選択の余地はないし、必要なら、後に法廷で決着をつけることができると、彼女は話した。私のバッジは、「趣味が悪い」とも彼女は言った。

 その後、キャロルは、(だれか特定できない) 警備関係者に相談した後、あなたがたが、その日の最終便でもある第二便で飛びたいというのなら、バッジをはずして、チェック済みの荷物に入れるか、それとも自分に渡してくれることを要求すると語った。また、機内持ち込みのバッグについては、テロリスト・バッジがこれ以上機内に持ち込まれて、それを身につけ、乗客と乗員の精神状態を危うくする恐れがないことを確かめるために、中身を調べねばならないであろうとも。

 機長が私を運ぶのを拒否したので、彼女は、私を最初のフライトに乗せないというのはわかったけれど、なぜ次のフライトについても拒否に遭いそうなのかがわからないと言った。BA には、言論の自由について、ちがう意見を持っている機長がいるかもしれないから、二番目の機長が私を乗せるかどうか知るために、喜んで話をしたいと持ちかけた。機長は忙しくてあなたと話す時間はないし、おおざっぱに言って、BA には、「テロリスト容疑者」などと書いてあるバッジをつけている者の乗機を認める機長などいるとは思えないと、彼女は言った。乗客も乗員も、テロリズムに神経質になっていて、それを口に出すと彼らは心配すると言った。航空機からテロリストについての言及を完全に排除したいなら、新聞もすべてとりのけるべきではないかと、私は言ってみた。

 たとえば「トニー・ブレア万歳」とか、ちがうことが書いてある他のバッジをつけていたら、乗機を許されるのかと尋ねた。それなら大丈夫と思うと、彼女は言った。「テロリズムは悪だ」というのはどうか。多分乗れないだろうと、彼女は言った。他のバッジの可能性、たとえば「テロリズム反対」などの例を挙げながら、BA の航空機のなかでは、いかなる政治的主張の表明が許されるものかを判断しようとして、私は議論をしかけはじめた。しかし、彼女は、一晩中ここに立って仮定の話をするのはかまわないが、自分には興味がないとのことであった。結局、彼女の命令にしたがって、自己検閲をしようとしない私は搭乗を拒否された。

 一連のやりとりが終わった後、私がそのバッジをつけている意味と理由について、彼女個人に知ってもらうためだけに説明したいと申し出た。彼女はとても知りたがった。これは我々すべてのことを表しているのであり、テロリストと疑われ、なんの理由もなく身体検査をされ、並んだり押し込められたり、靴を脱がされ、身分を証明させられ、自分をさらけださせられて、侮蔑を甘んじて受ける我々みんなのことなのだと、彼女に話した。今日のアメリカでは、すべての無実の人々を含むだれも彼もがテロリスト容疑者になっているが、それはまちがっている。このバッジの意味するところはそれなのだ。「テロリズムを打ち破るために」我が国が権威主義的な専制国家になってしまうとすれば、テロリストたちの勝ちだ。きょうの BA は、この潮流を見事なまでに体現しているのだと述べた。彼女は理解はしたけれど、同感はしなかった。その個々の行動によって、この国を警察国家にしつつある人々の大多数と同様である。

 アニーは、自分が搭乗を許されない理由を尋ねた。彼女は、異議のでそうなバッジをつけてもいないし、持ってもいなかった。キャロルによると、私との結びつきからだという。結びつきによる有罪とは、私にはこれ以上うまい表現は思いつけない。アニーが私と別にチェックインしたのだったら、飛ぶことができただろうかと尋ねたが、答えはなかった。(我々は、混んでいる便だったので、10 列ほど離れて座っていたので、彼女と一緒であることをクルーに指摘したのは、この私であった。彼女がそのことに気づきもしないまま、私が飛行機から連れ出されるのを恐れたからである。)

 彼女を連れにいったスチュワーデスは、私がテロリストの容疑者だとフライト・クルーに警告するために (!)、警備関係者がバッジをつけさせたのだと思うと言っていたと、後でアニーから聞いた。そうすればたしかに安全だ。

 機内から排除される前に、私は周りの乗客たちと話したが、だれひとり、ロンドンまでの 10 時間を私の隣に座っていることになにか問題があると思っているような人は皆無であった。クルーが指摘するまではバッジに気づく者はいなかったし、だれひとり、それを見た後に反発する者もいなかった。問題視したのはクルーだけである。私の知るかぎりでは。

ジョン・ギルモア■■

 追伸 : ID(身分証明書)を要求されるので、私はアメリカ国内で飛行機に乗らないことを知っている人々へ。他の国へ旅行するためにパスポートを示すことは進んで行う。しかし、自分の国のなかで飛行機に乗るのに、ID つまり「国内パスポート」を提示することは望まない。

[2003.7.25.]


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