★「マッカーシーの時代を思わせる屈辱と嫌悪」

 コラムニストのエリック・マーゴリスが、「戦争大統領」ブッシュに我慢ができなくなっているアメリカ人の心情を描いている。今回は、このコラムをかいつまんで訳出しよう。

 ワシントン発 ディック・チェイニー副大統領の補佐官、ルイス・リビーが、CIA秘密諜報員の身元をリークした件で起訴されて以来、アメリカの安全保障族とネオコンの、長い間くすぶってきた対立が先鋭化している。

 FBIの捜査が進めば、ホワイトハウスに巣くうネオコン一味がいかにしてアメリカを戦争に引きずり込んだかが明らかにされるであろう。ワシントンの空気は最低だ。CIAからは、ネオコンに対して、敵を利する「第五列」呼ばわりまで出ている。

 16年間、コーリン・パウエル前国務長官の首席補佐官をしたローレンス・ウィルカーソン大佐は、ネオコンの連中がアメリカの外交政策を乗っ取って、戦争をねつ造したと、公に非難している。彼は、ブッシュ政権に、危険なくらいに無能力との烙印を押す。

 ウィルカーソンが「連中」と名指ししているなかには、チェイニー、ドン・ラムズフェルド国防長官、元ペンタゴン官僚のポール・ウォルフォウィッツ、ダグラス・フェイス、リチャード・パールなどが含まれる。

 国家安全保障局の前局長、ウィリアム・オドーン将軍は、ブッシュのイラク侵略を「アメリカ史上最大の惨害」と呼んだ。

 さらにショッキングなのは、共和党の長老による非難だろう。父ブッシュの国家安全保障担当補佐官だったブレント・スコウクロフト将軍が、息子ブッシュは、イスラエル首相アリエル・シャロンの小指に巻きつけられているようなものだと言い放った。

 ロンドンのダウニング・ストリート・メモは、イラクを越えて、サウジアラビアとパキスタン占領を、ブッシュが望んでいることを明らかにした。

 FBIはネオコンとの戦いを推し進め、イスラエル・ロビーのネオコンふたりについて捜査をはじめた。ワシントン最強の聖域にメスが入る。それに、ペンタゴンにいるネオコン分析官ひとりにもFBIの手が伸びている。容疑は安全保障上の秘密をイスラエルに渡したというものだ。ワシントンのネオコン達は、大規模なスパイスキャンダルに発展することを恐れて、このニュースを必死に抑え込んでいる。

 CIA内部では、チェイニー一派によって国家安全保障がめちゃめちゃにされてしまったのを怒るプロの多数派要員と、ホワイト・ハウスの言いなりになっている少数派との間の亀裂が深い。これまでに、ネオコンに楯突く愛国的CIA職員が、何人クビになったことであろう。

 虐待の事実をねじまげるブッシュとチェイニーは、共和党とペンタゴンの反乱にも遭遇している。やがて、最高裁からもなんらかの反応があるはずだ。

 誘拐され、薬物投与され、冷凍状態で明かりのない地下室に放り込まれ、食べ物を与えられず、眠りを奪われ、大小便まみれにされ、激しく殴打され、肛門をおかされ、模擬処刑をされ、電気ショックでやられ、特殊な板に磔にされたうえ水に浸されて自白を強要される。

これらは、今や世界中にあるアメリカの秘密収容所で行われていることだ。アブグレイブの恐怖など、前戯に等しい。この事実が、モラルにはうるさい南部共和党員たちを悩ませている。彼らは独自に調査を行おうとしている。実際、ルーマニア、ポーランド、ブルガリアなど東欧の秘密刑務所の実態が漏れ出している。ただし、彼らはこれら刑務所をただちに閉鎖することは要求していない。

ジョン・マッケイン上院議員は、虐待を禁じ、ジュネーヴ会議の取り決めを順守させる努力の中心にいる。

私がアメリカ軍の兵士だったときは、この取り決めは神聖なものだった。戦時にはこれによってすべの人が守られた。CIA前アフガニスタン担当部長は、同様のことを最近、雑誌に書いている。みごとな文章だ。

 ところが、ブッシュもチェイニーも、戦時に兵役を逃れた過去を持っている。ジュネーヴの取り決めは、たわごとだと主張しているのは、そういう彼らなのだ。

 ブッシュは、マッケインの法案に拒否権を使うと脅した。チェイニーは相変わらず虐待を唱道している。KGBもまっさおだろう。アメリカ人はいつか、マッカーシー時代と同じ屈辱と嫌悪の思いを抱きながら、この今の時代を振り返ることだろう。
[2005.11.21.]


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