★共和党下院議員の「イラク攻撃反対」の論

 ここに紹介するのは、テキサス州選出下院議員ロン・ポール(共和党)によるイラク攻撃反対のアピールである。9 月 20 日にネット上に登場した。

 私は長年にわたり、外交政策に対して、倫理とアメリカ憲法の見地からアプローチすることを唱えてきた者である。平和と通商と友情の政策が、あらゆる点において、戦争と保護主義と対決主義にはるかに勝るとの、衷心からの信念に基づいて、私はこれを唱道してきた。しかし、外交政策に於いて、議会は、憲法の教えにも初期のころの大統領たちのアドヴァイスにも従うことに、なんらの関心も持っていないと思われる。

 干渉主義、国際主義、インフレ容認、保護主義、強硬外交政策、そして好戦主義は、抑制政策よりも、この我が国の首都に於いてはずっと人気がある。

 私は、我々がただちにイラクに侵入しなければならない理由についてのあらゆる議論を聞いてきたが、この不必要にして、無意味かつ危険な戦争を阻止しようとする、勇敢な人々は議会にはほんのわずかしかいない。この数少ない人々は、今回の侵略戦争の言い訳のひとつひとつに対して適切な反駁をしてきた。しかし明らかなのは、けっして耳を傾けようとしないか、あるいは、この侵略の陰の動機によって、反対を志向する人々の口が封じられているか、そのである。

 戦争レトリックに味方する、悲劇的にしてもっとも抗しがたい言い訳が、政治談義のなかに登場してきている。票が政治の全て、11 月の選挙、アメリカ議会をどちらの党派が制するかといった雑音が聞こえている。つまり、主要な関心事は政治権力なのである。真珠湾の後、日本への宣戦布告が政治的理由で遅れるような事態が想像できようか。政治的優位を狙って、選挙の前に戦争の問題について賛否を問うなどということが想像できようか。先頭に駆り出され、戦争がプランどおりにいかないときは死ぬことさえある人々の犠牲において、政治的利益のために戦争レトリックを煽る人々がいるなどと想像できようか。

 そんなことがあると信じたくはないけれど、噂は飛び交っている。戦争問題について及び腰に見えるのは、非愛国的と考えられるので、11 月の中間選挙の前にとるべき政治姿勢としては危険だというのである。このために多くの政治家が困難な立場に立たされるかもしれないという事実は、愉快でもあり、そう思うことはかえって正気の証明である。

 侵略戦争を大目に見ようとして賛否の投票が行われ、それによって選挙で困難な戦いをすることになる議員たちが出てくるという、この政治的状況全体には、若干のアイロニーがつきまとう。昔からの常識には反するが、戦争は、これを推進する政治家にとって、けっして利益にならないのである。ウィルソンとローズヴェルト両大統領は、戦争の埒外にとどまることを公約することで再選されたのである。朝鮮戦争の間権力の座にあった民主党を 1952 年に打ち破ったのは、この流血の終結を約束したアイゼンハワー将軍と共和党だったことを思い出すといい。ヴェトナム戦争は、圧倒的な支持と興奮、強硬主義の熱気ではじまったけれど、終わってみれば、ジョンソン大統領の政治的キャリアに不名誉と屈辱とが残った。ケネディの短い在任期間の間でもっとも大きな挫折は、キューバの政治的変化を求めながら、ピッグス湾事件で悲運に見舞われた一事である。湾岸戦争でさえ、当時圧倒的勝利と考えられ、その余燼はいまも残っているけれど、それが、父ブッシュの 92 年の再選努力にプラスに働くことはなかった。

 戦争が政治的にプラスにならない理由はふたつある。無関係な人間たちが死ぬことと、経済がつねに打撃を受けることである。興奮とプロパガンダが過ぎ一段落したときに、このふたつが、かならず人々を不幸せにされる。堂々とした、痛みを伴わない勝利と結びついた高揚感は、死と破壊と経済的苦痛という、あからさまな現実によって置き換えられる。高揚感に代わって、結局残るのは心の痛みである。ピッグス湾でも、朝鮮半島でも、ヴェトナムでも、ソマリアでも、そしてレバノンでもそうであった。

 倫理と合憲と正義について聞こうする者はもはやいない一方で、多くの人を駆り立てる戦争と政治には耳を傾ける人がいるであろう。戦争賛成の一票を梃子にしてこの秋の選挙戦で名目上の勝利を得たとしても、ほとんど役には立たないであろう。短期間でもプラスに作用することはない。たしかに、戦争はけっして勝者になれないことを歴史が教えている。とくに、戦費を払い、戦い、そのために死んでいく人々が、この戦争は必要でさえなく、国家の安全や自由への戦いとまったく無関係であり、主権国家を支配することで利益を得るに至る特別な利害につきうごかされたのだということを知るに至ったときはなおさらである。

 平和はつねに戦争に勝り、それはまた政治的にも勝者である。

(2002.9.24.)
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