★インターネットで読む「サダム・フセイン捕縛」


「捕縛」直後のサダム・フセイン(右)とそっくりだと、ネットを賑わす
『ヤング・フランケンシュタイン』のジーン・ハックマン(左)

 イラクのフセイン元大統領「捕縛」のニュースは、日本時間の 14 日夕刻にテレビ報道された。それから翌朝に至るまでの間に、ネット上に現れた関連記事を渉猟した。以下は、その際のメモである。

 サダム・フセインが同盟軍の手に落ちたことを最初に公表したのは、イギリスのブレア首相。ブレアは、サダムをどう裁くかは、イラク人が決めると述べている。しかし、アメリカのブッシュ大統領は明言していない。
 
 イラクの統治評議会も、自らの法廷で裁くことを望んでいる。イラクの司法制度に信頼が置けないとして、イラク人の判事と、多国籍の判事とが並んで審理するのが望ましいという考え方が、アメリカの専門家筋から出ている。アメリカ人判事ではまた批判を受けかねないという懸念も。
 イラクの統治評議会はブッシュ政権によって任命されたわけで、彼らが主導する裁判に公正さを期待できるのかという問題が浮上する。こうしてやはり、アメリカの占領統治そのものが問われるわけである。
 アメリカはサダムを捕らえたかもしれないが、逆にその呪縛にさらされるのではないか。
 
 「彼を檻に入れて、通りの側に置け。そうすれば、我々はみな、通りがかりに、かれに唾を吐きかけられる」(親族 5 人をサダムの部下に殺されたイラク人)
 
 イスラエルにミサイルを撃ち込んだアラブのリーダーはサダムだけだ、という評価。
 
 「彼はよくしゃべり、協力的だ」(捕縛の記者会見を主宰したリカルド・サンチェス中将)
 
 「協力的」なサダムが、アメリカにとってはもっともほしい大量破壊兵器の所在に関する決定的情報を伝えるのではないかとの期待感が出ている。
 「サダムが尋問されて、大量破壊兵器を保持していたと認めたら、大統領にとって大きなプラスになるだろう」(ジェームズ・A・サーバー/アメリカン大教授)
 逮捕直後の尋問で、サダムは、その保持を断固として否定しているという。それにしても、本来は災禍をもたらすはずの情報がアメリカ大統領の「延命」に貢献するというのもひどい話ではないか。ブッシュはゴアに勝ったと認定されたとき以来そうだが、9.11 に代表されるように、負のバックアップばかりを受けて踏んばっている。
 
 サダムは協力的ではない、という報道もある。そのひとつが、『タイム』誌のウェブサイト。
 
 サダムとともに押収された 75 万ドルはすべて 100 ドル紙幣であった。
 
 「捕縛」直後、グラスの水を差し出されたサダムが、これを断わって、その理由について、次のような哲学的な説明をしたと、イスラエルの『ハアレツ』紙が報じている。「私は悲しい。私の国民が奴隷状態に置かれているからだ。いまこの水を飲めば、トイレに行かなくてはならない。国民が奴隷にされているのに、私がどうしてトイレを使えようか」
 
 「父ブッシュは、1991 年の湾岸戦争で、サダムをクウェートから叩きだした。ブッシュがホワイト・ハウスを去った後に、サダムはその暗殺を企てた。この事実は、2002 年に子ブッシュによって国連安保理で明らかにされた。だから、サダムはブッシュ・ファミリーにとって12年に及ぶ強迫観念の源だった。逮捕発表の大統領がとった慎重な態度の裏には、雪の朝のホワイトハウスを包む大得意が隠されているのだ」(エリザベス・ブュミラー/『ニューヨーク・タイムズ』紙)
 
 次号の『ニューズウィーク』は、イラク戦争反対を貫き、民主党大統領候補の本命として浮上しているハワード・ディーンをカヴァー・ストーリーにするはずだったが、この大事件で飛んでしまった。
 
 「サダムがいなくなったことの意味はなにか。アメリカ人はもはや、レジスタンスがサダムにつながっているという言いわけや正当化ができなくなったということだ。抵抗運動のメンバーのなかには、サダムがいることで勇気づけられていた者もいた。しかし、全体としてみれば、レジスタンスは、彼の追随者やバース党に由来するものではないと、米国人は気づくことになるだろう」(アブド・アルバリ・タハ/イエーメン人) ブッシュは、「捕縛」後の演説のなかで、サダムの支持母体であったバース党への警告を述べていた。
 
 「アメリカがイラクを占領する大義名分は、サダムの残党を除去するところにある。イラクの各グループは、アメリカがあまり早く撤退すると、サダムに忠実な一味が息を吹き返すことを恐れていた。しかし、これからは、同盟軍のイラク駐留に抵抗するための政治的軍事的一歩を踏み出すだろう。だから、サダムの捕縛によって、アメリカの占領に反対する、各地の運動が激化すると予想される」(ズヴィ・バルエル/イスラエル『ハアレツ』紙)
 
 「我々にはもはや言いわけはない。サダムが世界にとっての脅威だったのなら、それはなくなった。いまこそイラク人に統治権を返還して、アメリカ軍を撤退させるときだ」(チャールズ・ペーニャ/CATO 研究所)
 
 「サダムの捕獲で、ふたつの可能性が開けた。イラクに早急に主権を返すこと、そして、国際社会を引き入れてアメリカの占領を終わらせること」(アイヴォ・ダールダー/ブルッキングス研究所)
 
 サダムを「捕縛」したのを、アメリカが手を引く口実にしろという論調が、ネット上に目立っている。ブッシュにはその気はないはずだ。これだけ元手をかけたんだから、なんとか回収できる目途を立てたいはずではないか。

[2003.12.15.]


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