★愛と希望を語ることでよしとするのか

2003年11月8日

ウィスコンシン州マディソンで行われた「メディア改革に関する全米会議」で、公共放送 PBS の報道番組「ナウ」のホスト、ビル・モイヤーズは、基調演説に立ち、そのなかで、次のように述べた。

「我々が語ろうとしているのは、デモクラシーの救出に他ならない。デモクラシーは両極に分裂し、麻痺と粉砕の危機にある。これが、不安を助長する言い方だとはわかっている。しかし、我々が直面する現実は、警戒警報を発するべきものなのである。人々の同意による、自由で責任ある政治は、情報に接することのできる公衆なくしてはありうるはずがないからである」

2004年11月13日

大統領選で民主党が敗北したことについて、インターネット・マガジン『オルターネット』のコラムニスト、マット・タイビが、次のように書いている。

「ブッシュの再選は我々の過ちである。と言うのは、我々のあまりにも多くが、お互いを愛する道を見つけるより彼を憎むほうが簡単だと思ったからだ。もう少し一生懸命になって、愛に働きかけをするならば、DLC(党内の穏健なネオリベラルを中心にした民主党指導者会議)のシニカルな連中に頼って、次回の正しい「処方せん」をひねりだすこともないのだ。幸せと希望そのものが売りものになるのだから」

タイビは、60 年代のヒッピーたちの理想に立ち戻れと言っているのであろうか。とするならば、すでに結論は出てしまったようなものである。望みなし、と。進んで後ずさりする進歩派の姿が、ここに現われている。もっとも、タイビは民主党員ではない。

2004年12月8日

クエートのブーリング基地で、ラムズフェルド国防長官が、兵士たちの質問を受けている。戦闘機のメカニックを担当する陸軍特技兵、トーマス・ウイルソンが質問する。

「我々兵士は、近所の埋め立て地をあさって、スクラップを探し、防弾ガラスを拾って、自分たちのトラックの装甲をしなくてはならない。これはなぜなのか」

同意と賛同の叫びが、ラムズフェルドに会いに来た 2,300 人の兵士たちからあがった。

ラムズフェルドはとまどいつつ、もう一度言ってくれと、ウィルソンに求める。

「これから北へ進軍するのに、これに見合う装備の装甲トラックがないのです」とウィルソン。彼の所属するテキサス陸軍州兵部隊は、イラクでの一年間の任務に就くために、まもなくクエートを出発することになっている。彼の質問は、ペンタゴンをずっと悩ませつづけながら、公にされることのほとんどなかった問題を衝いている。

ラムズフェルドは、装甲強化に軍は費用も努力もけっして惜しまないとしながら、「世界中の装甲を集めてトラックを装備しても、なおトラックは爆発させられないとはかぎらない」と、最後には質問をはぐらかしている。

イラク抵抗派が乱造する爆発物に対して、世界に誇るアメリカ軍が自らを決定的に守る手立てがないことを告白したことになる。

2004年12月17日

ビル・モイヤーズが、公共放送 PBS の報道番組「ナウ」のホストとして、最後の出演をした。この番組は、2000 年以来、週 1 回 1 時間ずつ放映されてきた。モイヤーズの最終回のテーマは「右派メディア」に関するもので、彼はこれらメディアを、「共和党全国委員会の広報担当」と呼んだ。

モイヤーズが維持してきた番組そのものは、今後、共同ホストのデイヴィド・ブランカチオによって、続行するが、時間は、30 分に短縮される。残りの30 分は、右派メディアの有力パーソナリティ、CNN のタッカー・カールソンと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のポール・ジゴットのふたりがホストを務めることになっている。番組最終回のテーマを象徴する人事である。去っていくモイヤーズの背中を撃つようなものでもある。

モイヤーズは、かつてジョンソン大統領の報道官を務め、その後、ニューズデイ紙の発行人となり CBS ニュースでも仕事をした。PBS では、1971 年以来 30 年あまり、「ジス・ウィーク」「ビル・モイヤーズ・ジャーナル」などのホストとして活躍した。(2003年11月8日)

2004年12月22日

ニューヨークの隔週刊紙『ジ・インディペンデント』が、ブルックリンのプロスぺクト・パークでたき火をして暖をとる、元陸軍特技兵ハロルド・ノエルの「危険な旅」を描いた記事を掲載した。彼は、イラクからの帰還兵であるばかりでなく、ホームレスでもある。

アメリカじゅうで復員兵 30 万人がホームレスとして生きているが、その半数はヴェトナムで戦った元兵士である。そこに新たに、イラク帰還兵が加わりつつある。

これまでにアフガニスタンとイラクで戦った米国兵は 95 万人。そのうちの 17% が PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を呈している、さらに、5 回以上銃撃戦を経験した部隊では、この数字が 19% になると、『ニューイングランド・メディカル・ジャーナル』誌が伝えている。25 歳のノエルもそのひとりである。定職に就けず、怒りの発作にしばしば襲われ、3 人の子どもと妻の家庭は崩壊の縁にある。妻たちは、彼の妹の家に同居しているという。

「私は毎日泣きながら歩きまわっている。自分の国で迷子になっているようなものだ。この国のために戦いながら、この国での居場所がわからない。もうなにをしたらいいかわからない。ときどき、銃をとってもうやめだと言いたくなる。わかるだろ、私がなにを言いたいのか。でも、なんとかしなくてはいけないんだ。自分はただ無駄に生命をかけたのではないんだから」 

ノエルは言葉を切り、次に言おうしていることが自分で信じられるか確信が持てないといった表情を浮かべたという。「あのずっと向こうに神がいる。---どこかに」

2004年12月28日

傑出した文明批評家であるスーザン・ソンタグが骨髄性白血病のため、ニューヨークで死去した。9.11 の攻撃はアメリカの外交政策に対する回答であると公式に述べたのは、著名なアメリカ人としては、彼女が最初であった。「これは、『文明』や『自由』や『人間性』や、あるいは『自由世界』に対する『卑劣な攻撃』などではなくて、アメリカの同盟関係と行動そのものの結果として、この自称世界の超大国に加えられた攻撃だという認識がどこにあるだろうか?」

ソンタグはまた、アメリカの政治システムについて、直截にこう述べていた。「長いこと我々のだれもが感じていることだと思うが、我が国は一党政治制度をとっていて、この単一党の一部が、他の名前、つまり民主党を名乗っているのだと、私は思う」

インターネット・メディア『スレート』に「ユーロ・トラッシュ=麻薬密売業者からもドルは見放されつつある」という記事が載った。

アメリカ・ドルはこれまで、世界でもっとも信頼のおける通貨と考えられてきた。だから、観光客は、どこへ出かけるのにでも、ドル紙幣やドルの TC があれば安心だと思い込んでいる。

麻薬の密売業者が、コカインまみれのドル札を大事に運搬するのもそのためである。アメリカの通貨の 55% から 70% は 50 州以外で流通しているという。

ところが、EC の拡大に伴い、ユーロによる決済が増大し、その傾向は、ユーロ圏に隣接した東欧諸国からロシアにまで及んでいる。2002 年 1 月から 2004 年 8 月までの間のロシアでは、ドルによる個人決済が全体の 94.1% から 84% に落ちたのに対して、ユーロによるそれはゼロから 15% に増大している。

麻薬の運び屋のお腹から、大量のユーロ札が発見されたり、キューバのカストロが、アメリカにいるキューバ人からの送金はユーロを歓迎すると声明したりして、ユーロ傾斜に拍車がかかる。

2004年12月30日

シアトルの市場調査会社、グローバル・マーケット・インサイト(GMI)が、ヨーロッパ、カナダ、中国、日本など8カ国の消費者 8,000 人に、アメリカ企業と商品の好感度を尋ねた結果を、インターネット・メディア『アンティ・ウォー・ドット・コム』が伝えている。調査は、インターネットを通じて、12 月 10 〜 12 日に実施された。

40 のアメリカ企業について、消費者が「アメリカ」を感じる度合、不快感を抱き買うのを差し控える行動にでる割合を調べている。

なかで、買うのを避けると 3 分の 1 以上が回答し、40% 以上が「きわめてアメリカ的」とみなした「問題」商品あるいは企業には、マールボロ、マクドナルド、エクソン・モビール、AOL、シェヴロン・テクサコ、ユナイテッド航空、バドワイザー、クライスラー、バービー人形、スターバックス、ゼネラル・モータースが含まれる。

逆に、とくに抵抗を感じない「安全」商品と企業には、ヴィザ、コダック、クリネックス、ジレットなど。それに、マイクロソフトやハインツ、ディズニーなどには、他に競争相手がないため、好悪の対照になっていないようである。

とくにヨーロッパとカナダで「反米」意識が強い。3 分の 2 以上の消費者が、最近 3 年の間に、アメリカの外交政策、とくにイラクの戦争のおかげで、それまではそれほど悪感情を抱いていなかったのに、アメリカ観がマイナスへ振れている。石油供給をコントロールしたい欲求が、アメリカをイラクに向かわせたと信じる者がほぼ半数に達している。

やはりヨーロッパとカナダでは、米国外交の基本は私利私欲と帝国の建設と考える消費者がやはり半数近くに達した。自由やデモクラシーの擁護のためと考える者は 17% にしかないらない。

調査対象全体でも、半数は、アメリカ製を嫌いな理由の一部は、外交政策にあると答えている。

興味深いのは、イギリス、ドイツ、フランスのヨーロッパ 3 国の回答者は、自分たちの価値観が、アメリカよりも他の 2 国のほうにより近いと、ほとんどが感じていることである。アメリカへの信頼の凋落と反比例して、ヨーロッパ各国間の親近感が深まっていることになる。

2004年12月31日

反戦保守派の論客、ジャスティン・レイモンドーは、大晦日のコラムで、2004 年を「戦争犯罪者の一年」と規定して、アメリカ社会の無気力ぶりについて、次のように述べた。

「ジャネット・ジャクソンが、スーパー・ボウルのハーフタイム・ショーで、ほんのわずか胸を露出させたというので、アメリカじゅうが大騒ぎになって、これを放映したテレビ局に連邦通信委員会が罰金の脅しをかける。しかし、ペンタゴンは大統領に完ぺきに支持されながら、サディズムの饗宴の指揮をとっている。サダムの圧制から『解放された』はずのイラク人 1 万人がアメリカの拷問刑務所で朽ちていきつつある、これらイラク人に加えられる組織的なテロリズムが正当化され、この社会は沈黙したままである。アメリカ政府がとる行動と言えば、議会と密接に共謀して、明るみに出かけたスキャンダルを隠ぺいすることだけではないか」

<<Catboat Journal=2>>

[2005.1.21.]


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